バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

シビウ演劇祭四日目・五日目~ASYLUM~

 担当している、Kibbutz Dance Companyというイスラエルのダンスカンパニーの公演「ASYLUM」。去年、オンラインの配信でこのカンパニーとバットシェバというイスラエルの他のダンスカンパニーを観て、その表現に惹かれていたので担当できているのは嬉しい。

 

6/27の22時からと6/28 の18時からFabrica de Culturăという元々廃工場だったところのファウストホールでの公演で、どちらの公演もスタンディングオベーションだった。

 

ボランティアとしてはルーマニアの子たちがもうあと二人いて、その子たちが非常にしっかりしていたので、色々チェックしたり、頼んだり細かいところで少し動くだけだった。会場が他の会場からかなり離れているため、長時間他のインターナショナルボランティアや現地の友達にも会えず、自然な事ではあるが、ルーマニア語が頭上を飛び交う環境のなかで無力感もあった。言語、文化の違いなどもあるが、自分の内気な性格も問題だなと強く感じ、もう少し何かできたんじゃないかという気持ちと、いやギリギリ食らいついていけてるという気持ちのせめぎ合い。しかし、最後には色々ダンサーの人達と話したり(やっぱり舞踏butohは有名なのだなと再確認できた)、日本の人と繋いだりできたので良かったと思いたい。

 

私がリハーサル合わせて四回見た「ASYLUM」(https://www.youtube.com/watch?v=ysG-CESyw8k)は日本語では「避難」「亡命」という意味で、振付家はRamiBe'er。コンセプトはタイトルからも分かるように、アイデンティティ、外国人、抑圧、差別、支配、自由、帰属、移民、祖国、あこがれ、故郷等のようだ(下記HPを参照)。

 

In his work the ‘Asylum’, Be’er examines concepts such as identity, foreignness, oppression, discrimination, domination, freedom, belonging, immigration, homeland, longing, and home. These concepts are relevant to every human being from an existential view, wherever he or she may happen to be situated in place and time. The quest for a place that is identified as a home is part of the human existential experience.

In relation to the present moment in which we are in, the reality touches subject matters within Asylum as we are all witnesses to the millions of asylum seekers that are are escaping wars and conflicts across the globe, trying to find their place where they will feel safe.(キブツダンスカンパニー公式サイト

https://www-kcdc-co-il.translate.goog/en/show/asylum/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=op,sc

より引用)

 

 舞台はまず拡声器を持った人が現れるところから始まる。彼は「712213」という数字を繰り返す。そこから他の20人近いダンサーが登場してきて群舞になるのだが、腰を下ろした姿勢が基本姿勢でなんだが能に似ていると思った。腰と手の動きが印象的で、脱力系の自分も踊ってみたくなるような中毒性のある振付。

そこから、少人数の踊りに移っていくが、この作品で印象的なのが、口を大きく開けて叫んでいるような表情と、歩く振付だ。歩く振付は、ソロやデュエットでの踊りの間に挿入されて、客席側に向かってきたり、後ろ歩きになったりする。それは移民の移動、逃亡を表しているのかと思うが、後ろ歩きの時は時が戻っていくような表現にも思えた。

 またその他にも印象的だったのが、男女が親密な雰囲気で踊るデュエットダンスで、男側が段々女性に対して支配的、暴力的になっていく場面や、舞台上に倒れている10人程度のダンサーたちを、他のダンサーが助けおこそうとするというような場面だ。これらの場面は、印象的に繰り返された。

 最後の場面では、プロローグと同じような振付の繰り返しなのだが、微妙に変化がつけられていて、銃を構えるような動作が途中かなりの回数挿入される。客席にも向かってきて緊張的な雰囲気になった後、全員倒れて去り、一人のダンサーが拡声器を舞台上において終幕。

 

全体通して音楽が耳に残るもので、今も頭の中を繰り返し流れているのだが、上手く表現する言葉が見つからない。どの音楽も少し不穏な雰囲気を醸し出すようなものだった。

 

まだ日本に行ったことは無いそうなので、いつか日本でも観れたらいいなと思う。あとは、もっとダンスの批評が出来るように勉強したい。