バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

シビウ演劇祭九日目・十日目

また新しい担当カンパニー、ブカレストのTeatru Masucaが来て、その劇団に付きっきりだった。なのでその他は目玉の「ファウスト」を除き、日本にも来たイタリアのマクベス等評判がいいものも観ることができなかったが、その分、野外としてはしっかり舞台を作る方の劇団に付ききりで、色々面白い経験ができたと思う。

今回はルーマニアの劇団なので、言語的な面で少し不安もあったが、現地のボランティアの姉さんが大きく包み込んでくれるし、劇団の人も常連で馴れてるからかピリピリした緊張感というものがほとんどなく、たぶん一人だけ混ざっている日本人に関心を寄せてくれていたので、過ごしやすかった。テクニカルのおじさんたちはルーマニア語で話しかけてくるので雰囲気だけで話してたし、いつも冗談言ってくる、仕込み中にチェスやってる、何やってるかわからないおじさんとかが愉快だった。

 

ルーマニアTeatru MasucaのExodus

スモールスクエアというその名の通り、嘘つき橋の近くの小さな広場を使った野外公演

背景がたくさんのひまわりと青空の写真になっていて、ウクライナのことをテーマにしていると分かるようになっている。実際、最近のことを受けて創られた新作らしい。

絵の具を散らした、汚しのかけられた衣装を来た人々が戦禍を逃れて離散するという話で、台詞はなくノンバーバルのパフォーマンス。ダンスというよりも、ゆっくり動く機械仕掛けの人々という感じ。白塗りで、木製の旅行カバンを持っているので、維新派かなと一瞬思ったが、そんなこともないかもしれない。全体的には良かったが、爆発音が何発も立て続けに鳴る部分がかなり長く、子供たちが怯えていたし、ウクライナから実際避難してきている子達も多いと思われるので、少し大丈夫だろうかという気持ちにはなった。

 

同じく

Teatru MasucaのA perfect crime (the Angels from Văcărești)

二日目は異なる演目を上演していた。こちらは、‘Exodus’と異なり結構台詞やナレーションがある。登場人物は、ミカエル等の羽を背負った天使たちと、老人、老婦、若いカップル二人。ルーマニア語で進んでいくので細かい話までは分かっていないのだが、ブカレストの歴史ある教会をチャウチェスクが壊したことにまつわる話だった。若いカップルが結ばれ、そして自身たちも天使になっていくのだが、それを見守ってきた幸せな教会が崩壊し、天使たちも羽がもがれていく。視覚的には美しいパフォーマンスだが、それだけではなくかなり社会的なテーマを持って上演しているカンパニーなのだなということが二日間の公演を見て分かった。

 

ファウスト

演劇祭の目玉、シルヴィウ・プルカレーテ演出の作品、日本でも実際に寺山修司天井桟敷の公演を生で観ていたらこのような感じだったのかもしれないと、特に舞台奥で繰り広げられるワルプルギスの夜?のシーンで思った。激しいロックの音色の中で、人が吊り上げられて飛んでたり、豚の被り物を付けた人が踊り狂っていたり、水噴き出してたり、炎噴き出してたり、身体・身体・身体という感じだった。その中を赤色のゴージャスな衣装を着たオフェリア・ポピが進んでいくのがゴージャスで妖しく圧倒的な存在感だった。

 

スペクタクルすぎて圧倒されて逆に言うことが無いので、また冷静になってから追記したい。

 

Aerial Strada & Filarmonica de Stat SibiuのProject Sylphes feat. Orchestra

シビウの現地のオーケストラの音楽を背景に、クレーンに吊り上げられながらアクロバットをするというもの。最初は、宇宙服みたいな恰好で、大きな地球のバルーンが吊り下げられた上で踊っていて、無重力の宇宙空間風のパフォーマンスだった。地球を外して、色々なフォーメーションに変化していくのだが、見せ場で紙吹雪を大量に上空から散らし、照明に照らされ落ちていく紙吹雪とダンサーの姿は美しかった。

 

Drone & lasers show

初日にも観たが、少し違ったような気もする。ドローンもそれはそれですごいのだが、やっぱり花火も体験して見たかったなあという気持ちが残る…

 

https://199.hatenablog.jp/

↑同じくシビウに行っているめいさんのブログ、雰囲気がすごく伝わってくる。

こちらでも紹介