バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

ブラックミュージカルの間演劇性-『The color purple』-


ピューリッツァー賞を受賞したアリス・ウォーカーの1982年の小説を基にしたミュージカルで、1985年にはスピルバーグが映画化している。

劇場前のポスター写真

 

劇場はThe Lowryという大学からバスで30分くらいのところで、割引チケットで三列目を実際の値段の半額以上の3000円くらいで買うことができた。また、字幕がある回の上演でより理解することができた。毎回やってほしい。

The Lowry、BBCとかが近所に合ってキラキラ新興都市という雰囲気。

 

奥行きが半分位で、家のような形の高さのある二対の壁によって区切られている舞台。この壁がすごく圧迫感があって、明らかに家庭内に押し込められている主人公セリーの家に対する恐怖感だったり抑圧だったりを視覚的に示しているようだった。

三列目からの景色。壁の圧迫感…。

この壁は、映像も映せるようになっている。最後絶対取り払われると思っていたが、流石に動かせるサイズではなくて、壁の扉が大きく開かれただけだった。

舞台には進行役の女性シンガー達が三人いて、コミカルにテンポよく話を進めていく。

とにかく、子供の時から父親に性暴力を受けて、無理やり結婚させられた夫にも奴隷のように扱われて、暴力を振るわれて、妹からも引き離されて、辛いことしか起こらない。それだけでなく、彼女もそういう思想に慣れきってしまって、義理の息子ハイポに結婚相手のソフィアの尻に敷かれていることを相談されたら、(夫の監視下ではあるものの)家庭内暴力を肯定するような返事をして、ソフィアに失望される。 

ただ、夫の元彼女である、歌手のシャグ・エブリーが体調を崩して家に滞在し、友情関係を育む中で彼女は変わっていく。セリーのシャグに対する感情は明白に恋愛感情として描かれていて、新鮮だった。

 

彼女たちの関係は、最終的にセリーの仕事にもなる衣装によって示されている。良い関係性の時は二人ともタイトルの反対色であるオレンジを着ていて、別れる場面でシャグが紫っぽい服に着替えるというのは分かりやすかった。

 

授業で学んだ、間演劇性、インターシアトリカリティというのを考えてみると、大体少しずつ形は違うものの以前見たドリームガールズとほぼ一緒の型だということに観劇中に気づいた。というのは、主人公の黒人女性が苦境を経て成功を掴む、黒人男性が最悪な家父長制男、最終的に勧善懲悪で黒人女性が黒人男性を打ち負かすという一連の流れだ。観客のマジョリティは白人で、彼らがこの酷い黒人男性にブーイングをするのだが、そもそもの問題というか、白人と黒人間の差別が周到に隠蔽されているような印象を受けた。二作品を短期間で観たことで気づいたことなので、これがまさに間演劇性だと思う。