原作はフランク・ヴェーデキントの1891年出版の小説で、今回は2006年にブロードウェイで初演されたスティーヴン・セイター脚本、ダンカン・シーク音楽のロックミュージカル版だ。
日本でも劇団四季をはじめとして、プロ・アマチュア団体等の上演がされている様だったが、私は今回が初めての鑑賞だった。原作も未読。内容は、性教育を受けず、大人によって抑圧されている思春期の青少年たちの悲劇で、主人公のメルヒオールとヒロインのベンドラの淡い恋心(?)、メルヒオールの友人で劣等生のモリッツの苦悩などが中心に描かれる。この性教育を受けておらず抑圧されているというのが、イギリスの大学生のイメージとあまり合っていない。そのため、そのギャップから劇の古臭さは少し感じた。
上演をしたミュージカルサークル(the university of Manchester’s musical theatre society) に注目すると、舞台がすべて生演奏だった。楽器の姿も見えないし、演奏も完璧すぎて全く信じられないのだが、実際、指揮者の映像を流す画面も舞台中程につけられていて、クレジットもされていたので本当に演奏していたんだと思う。また、このミュージカルは元々ハンドマイクで歌う上演形式が採られているらしいのだが、このプロダクションではむしろ役者が全員プロのするような小さいマイクをつけていた。(ハンドマイクで激しく歌うのも観たかったが)
照明や音響などはそういった裏方仕事を専門でやる他のサークルというのが存在しており、外注のような形になっているため、一定のレベルが確保されるのかもしれない。一方、装置というのがほとんどなく、コの字型で舞台を囲むようになっている客席も段差がつけられていない。二列目に座っていると、そもそも俳優が立っていても見にくいのに平気で地べたで演技をして全く見えないシーンがかなりあった。
当然ながら曲のナンバーが沢山あり、これは青春という感じで力強く歌い上げるものが多くてカッコ良かった。主人公のメルヒオール役の役者はスター性があって、雰囲気は役にピッタリなのだが、高音とか感情が高まってそのまま歌うというのはあまり上手くなく、むしろ友達のモリッツ役の方がその点は上手だった。女性達は大体全員上手で、ユニゾンのハモリがきれいだった。
衣装は、ドイツのギムナジウムのイメージで白と黒が基調になっている。全員アイシャドウ、アイラインを黒で引き、ネイルを黒にしていてゴシックな雰囲気だ。ヒロインのベンドラだけ、最初は純潔を表すような真っ白なワンピースで、メルヒオールと半ば強引に関係を持ってしまった後、メルヒオールの黒レザージャケット、黒いリボンに変わって変化したことが視覚的にも表現されていた。大人は男女それぞれ一人ずつ同じ役者によって全役演じられるが、衣装は変化しないので、判別ができないこともあった。
余談だが、本当にギムナジウムにいそうで、萩尾望都の漫画に出てきそうで、ティモシー・シャラメに似ている役者が逆に半ズボンじゃなかった。
全体的にレベルは高いと思うが、とにかく内輪の空気の凄さ、30分押し、見えない部分が多いということもあって少し満足できない部分もあった。