バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

ロングラン70年目ーアガサ・クリスティー『ねずみとり』ー

アガサ・クリスティー作のこの作品は、1952年11月25日に初演されてからコロナで休演を余儀なくされるまで世界最長のロングランを続けていたらしい。私は元々全く知らなかったのだが、幸運に同時期に留学している大学の後輩に教えてもらい、原作の本も貸してもらって予習をして観劇に臨んだ。

マチネ観劇、天気がいい

 

【簡単なあらすじ】マンクスウェル山荘で新しくゲストハウスを開業する若い夫婦のモリーとジャイルズ。ラジオではロンドンで起きた女性の殺人事件のニュースが流れ、雪が激しく降る中、5人の客と一人の刑事がやって来る。刑事は、この孤立した山荘で次の殺人事件が起きると訴え―

 

予習をしたおかげで話は理解できたのだが、本当に直前に読んでしまったために、実際の観劇の場面で肝心のサスペンスのスリルをほとんど感じられなかった。また、今回はマンチェスターでのツアー公演で観たのだが、まずこのような大きな箱でやるよりももう少し中規模小規模の舞台でやった方が良いのではないかと思った。実際ロングランを続けているロンドンのセント・マーティンズ・シアター(St Martin's Theatre)のキャパシティは公式サイトによると約550席であるのに対して、今回観劇したマンチェスターのオペラハウスは約1920席で四倍である。もちろん一番安い席に座っているので、舞台が遠すぎたというのもスリルをあまり感じられなかった一因だろう。

 

セットの転換もなく、ずっと緊迫した雰囲気で室内劇が進んでいくが、コミカルな部分もあり、上演中は日本でいう新喜劇(松竹の方?)のようなものなのかもしれないと少し思った。

 

また、カーテンコールで結末は明かさない様に念押しされるので気をつけなければならないが、本で読んだ時の印象よりも犯人が明らかにおかしい挙動で分かりやすく見えた。もちろん犯人を知ってるからかもしれないが…。

 

この他にも民宿経営者のモーリーがなぜ挙動不審な青年クリストファ・レンに優しく接するのか等、実際に観劇すると気づくことや、何故と思ってしまうことがあったのだが、ネタバレが怖いので早々に切り上げたいと思う。

 

ちなみに、ロンドンでは29000回以上上演されているのに、70周年にして初のブロードウェイ上演が決まったらしい。

www.theguardian.com