バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

交換留学記:Dramaコースの授業振り返り in イギリス

2022年内に終わらせられなかったが、せっかくなので一学期で受講した授業を簡単に振り返りたいと思う。

私は、交換留学の一年のプログラムでマンチェスター大学に通っており、特に演劇学の授業をとっている。三つの授業だけの限られた経験であるものの、このような情報共有ブログに助けられてきたので、私もどのようなことを学んだかシェアして行きたい。

 

1.演劇とパフォーマンス(一年生の必修)

1-3. Pretext, performance text,

演劇学の基礎的な理論、テクストについて、シーン分析の方法等

4. Ancient Greek Tragedy

古代ギリシャ劇-「アンティゴネー」

5. The Island (Fugard)

アソル・フガードの ”The island”(アンティゴネーの翻案)

7. Revenge Tragedy(The revenges tragedy)

復讐悲劇「復讐者の悲劇」

8. City Comedy (A Chaste Maid in Cheapside)

都市喜劇「チープサイドの貞淑な乙女」

9. Serious Money (Churchill)

キャリル・チャーチルの "serious money"

10. Victorian Melodrama (The Octroon)

メロドラマブシコーの"the octroon"

11. An Octoroon (Jacobs-Jenkins)

"the octroon"の翻案作品

12. Presentation preparation

火曜日の授業。1時間レクチャーと呼ばれる先生の講義があり、その後15人くらいに分かれて1時間半のセミナーと呼ばれる討論の授業がある形式。

授業は、then/there, here/nowという形で、古典を基にした最近の上演がどのようになされていくかを見ていく形式。古代ギリシャ劇やチャーチルなど自分の興味関心にもかなり近い題材が多かった。w4とw5、w9とw10、w11とw12は翻案や同じテーマを扱った新旧作品という感じで対になっている。

予習は、戯曲や研究論文を読んで、たまに質問が出ている時はそれに対する準備をしていかなければならない。授業内でグループプレゼンテーションがあって、その週のテーマになっている作品の最近の上演の情報、批評などについて分析するというものだった。私はw5のアンティゴネーの翻案作品のThe Islandで発表をした。

課題は、授業の一環でみた、二つの劇ーgeckoの『Kin』、もしくはoutboxの『Groove』での作品分析2000文字と、15分のグループプレゼンテーション(取組中)

セミナー担当の先生Kateの英語が私の英語力の問題もあるが小声で早口なので聞き取りにくいところがあり、しかも20分で調べて発表みたいなことを授業内に課してきたりするので授業前には緊張することが多かった。でもこの先生がフェミニズムと古典の研究者でキャリルチャーチルについても研究しており、一番私の興味関心に近いので何とかがんばりたい……。

 

2.演劇と近代化(2年生の準必修)

1.都市と大衆文化について (日本の歌舞伎やストリートパフォーマンス、パリの見世物芝居)

2.帝国主義とスペクタクル(インドのパルシ劇場とイギリスのメロドラマ上演)

3.自然主義、伝統と変化(ゾラの自然主義理論とチェーホフ桜の園」)

4.社会改良と全体主義マリネッティのイタリア未来派、メイエルホリドと構成主義イプセンの「人民の敵」)

5.フェミニズムとサフラジェット劇(サフラジェット劇、中国のフェミニズムと越劇)

7.アジプロと労働者演劇(スペインのアジプロ劇、

8.アジアとヨーロッパの出会い(ブレヒト「セチュアンの善人」、異化効果、中国の革命バレエ)

9.ポストコロニアル演劇(エジプト演劇、アラブの演劇、ストライキで授業なし)

10.暴力と戦争(アルゼンチン:Griselda Gambaroの劇, ミリグラム実験、グロトフスキ「アクロポリス

11.グループプレゼン

12.15分の先生との面談

 

木曜の授業。同じく一時間の講義に一時間半の少人数討論クラスだが、二年生だからか授業に参加している人数が少なく、元々15人くらいいるはずなのに5人しかいないような時もあった。人数が少ないと、グループワークというより先生との対話に近くなるので、ちょっとついて行くのが難しい瞬間もあった。ただ先生がめちゃくちゃ面白くて、英語も分かりやすくて、優しいこともあり、この授業が一番楽しかった。

詰め込み教育という感じで、どんどん色んな19世紀から20世紀頃の各国の演劇が紹介されていく。戯曲+いろんな人の理論を一回の授業で学ぶので、予習がめちゃくちゃ大変ではあった。「西洋演劇論アンソロジー」を持ってきたのは我ながら素晴らしい判断だったと思う。全世界的なつながりとか、挙げられている演劇形態の関係性を解き明かしていくというのは面白かった。

課題は15分のグループプレゼンテーションで、この授業のテーマの一つである、一次資料を基に発表するというものだった。この授業で仲良くしていた友達?二人と歌舞伎『三人吉三』の初演の錦絵で発表した。波乱も少しあったが、初演の『三人吉三』がどのような衣装だったか等、知らないことばっかりで調べるのも楽しかった。

また、最終的な課題が3500文字までのレポートで、イプセンの『人民の敵』の上演について書く予定だ。

 

3.アートと映画(一年生の必修)

1.映画史

2.撮影様式、モンタージュ

3.ミザンセーヌ

4.物語

5.作家理論

7.ジャンル

8.映画音楽

9.スター

10.観客

11.アダプテーション

12.クリスマス特別授業、エッセイの書き方

 

映画の基本的な理論をさらって行くような授業。授業形態は今までのものと同様。毎回予習で二本映画を観て、質問の答えを準備しなくてはならず、更にリーディングが50p以上で少し多めに課されていたのでかなり重たかった。しかも、セミナーの授業は、中国人の友達一人以外は、西洋の映画オタクの集団という感じで、バズ・ラーマンとかスパイダーマンとか色々ですごく議論が盛り上がる。私は、勉強不足や西洋の映画に疎いことがあって、そういう会話にはついて行けないので、毎回授業終わりに中国の友達と反省会をして愚痴を言い合うというのが定番だった。映画について勉強できたのは面白かったが、前提知識が少ない領域を英語で初めて勉強する難しさを感じた。

課題は、コース内の映画のシーン分析1500文字のエッセイと、コースに関するお題に関わる期末エッセイ2500文字。映画は新しく勉強することばかりなので、日本語でも知識が補完できる黒澤明の「用心棒」と時代劇のジャンルについてで書いている。

 

全体として、コースの担当が三人以上おり、相談しやすい環境が整っている部分や、エッセイの点数が出て、細かく添削を受けることができるのは日本の大学でも真似してほしいと思った(金がないので無理だろうが)。ただ、かなり生徒の自習に任されている部分も大きく、出席点がないからか授業に全然来ない人もいる。私は、交換留学で来ていてイギリスの高額な授業は払っていないが、元々留学生だけ二倍以上の高い授業料が設定されているのは良い気持ちがしないし、その授業料を三年間、計1000万円近く払うだけに見合っているかと言われるとそこまでではないかなと感じた。ただ、日本には演劇学を学べる大学は少ないし、在籍する研究者の数はケタ違いなので、卒論とかの段階になったらまた違うかもしれない。それにしても高すぎるが…。

交換留学に更に奨学金ももらっていることに感謝しながら来学期も頑張りたい。