バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

ウェストエンド観劇⑤ー『The book of Molmon』・『Matilda』・『The Lehman Trilogy』ー

クリスマス休暇での、ロンドンの観劇録も最終回だ。

学期が始まるとロンドンに行くような余裕は全く無くなってしまうので、結局日帰りも含めて三回も行き、観劇を繰り返した。ロンドンは本当に劇場がいっぱいあって、夢のような場所なのだが、観劇する以外の時間の使い方はまだ全く掴めてないし(マチネとソワレの間、寒い劇場街をさまよう以外の過ごし方が分からない)、毎回観劇後夜遅くなって食事をとり忘れる、そして体調を崩すなどの問題も起こったのでもっと持続的に健康的に観劇を出来るようにしないとと反省した。

今回の三作品はとても有名な作品で、私がわざわざ指摘するようなことは無いのではないかと思うので、軽く感じた事や起こったことを書いていこうと思う。

『The book of Molmon』 at Prince of Wales Theatre

劇場外観。

モルモン教の布教をする青年二人が、命じられた布教先のウガンダでてんてこ舞いをする話。スターウォーズホビットが出てくるメチャクチャな布教話や、ヒトラーなどの悪人が出てくる地獄のシーン、嘘みたいな笑顔のダンスなどなどコメディ作品でとにかく面白い。後ろの席の青年の話(盗み聞き)によると、楽曲が今までのミュージカルの名曲(Wicked, Annie, The lion King等々)をもじっているとのことだったので、意識して聞いていたが音楽的なセンスがないからか全然わからなかった。今度また比較して聞きたいと思う。

不真面目なお調子者のカニンガムがウガンダの少女ナブルンギの名前を間違い続けるという、英語帝国主義アメリカ人コメディのお馴染み展開があるのだが、最後に彼女の名前をナショナルレイルウェイストライキ(イギリスでは今めちゃくちゃストライキが起こっています)!と言ってこれがこの回一番の大ウケだった。受けすぎて劇が少し止まるくらい(ショーストップ)の笑い声だった。

また、前日に同じ製作陣(ロバート・ロペス)が関わっている『アナと雪の女王』のミュージカルを観ていたので、全く違うミュージカルではあるが、共通点を感じることもあった。例えばアナ雪の二幕、裸に近い状態の男女が踊るサウナのナンバー「Hygge」とモルモンの二幕「Spooky Mormon Hell Dream」は少しふざけたノリで最終的にコーラスラインのようなラインダンスになるという点が非常に似ていた。

洗礼やキリストなどは知ってはいても面白さがそこまでわからないこともあるが、隣の人の笑い方が素敵で本当に面白いんだろうなーというふうに笑っているのでこっちも楽しい気分になった。英語が聞き取りにくいことの多いコメディで、ネタにもそこまで馴染みがないにも関わらず、疎外感を感じさせずめちゃくちゃ面白いというのは流石だと思う。1人でも多くの人に観て欲しい。が、実際モルモン教の人とかウガンダの人がこれをみたらあまりいい気がしないのではないかとも感じた。

『Matilda』at Cambridge Theatre

二幕開演前の様子!最前列なので舞台の側面の装置が映っていない

まさかの最前列のチケットが50ポンド=8000円くらいで売られていたので、もうそんなことは無いだろうという気持ちで観に行った。しかし、高速バスが事故渋滞に巻き込まれたり、途中で車両が壊れたと言って乗り換えさせられたりしたせいで、時間通りに劇場に着くのは絶望的で、最終的に開演から30分くらい遅れて劇場に着いた。こんな時に限って何故という落胆しかなかったが、客席に行く際に、ハニー先生役の人がちょうど出番終わりで出てきて、スタッフの人に笑顔で挨拶していたのを見れたので少し落ち着いた。それにしても、「School Song」は聞きたかったが…。

映画版を観に行ってからまんまとマチルダ熱に浮かされているのだが、映画版が上手く改変している部分、兄の消去、ギャングの消去などをはっきりと知ることができたのが面白かった。とにかく、実際に生で観ると、目の前で踊っている子供達の可愛さというのが強調されて映った。一瞬こんな子供なのに平日から労働して大変だなとも思うのだが、客席にいる子供たちも歌を口ずさんでいて、彼、彼女らの夢を体現している存在のようで立派で愛おしく思う。

最前列で座っていて面白かったのが、当然のことながら役者がめちゃくちゃ近いということと、最前列は逆に見づらいということと、舞台装置や特殊効果をよく確認できるということだ。目の前にハニー先生が座ってしまって、全然奥が見えないシーンがあったり、「Revolting」のナンバーでも、目の前の子は良く見えるが全体を把握することはまったくできなかったりして、一長一短あるということを学んだ。パパイオアヌーの公演を最前列で見て以来だ。教室の机とかが床から伸びだしてくるのだがホリプロ版では普通に運んでくるのだろうか、非常に気になる。

またこれも最前列で全然その恩恵にあずかっていないが、はけて来るハニー先生に会えたことからも分かるように、キャスト達はべつにそこから行かなくても横にはけれるだろうという時でもバンバン客席降りするというのが特徴だと思う。

悪役のトランチブル校長が悪役ではあるが、ブーイングされるような役ではなくて、愛されキャラのような一面があったのも驚きだった。ただ映画だと女性が演じていたので、別に男性が誇張して演じなくてもいいかもしれない。

とにかく、装置にしても客席降りにしても、また、子役が三人だけと大幅に減らされることにしても、ホリプロ版でどのように上演されるかが気になって仕方がない。小野田龍之介のトランチブル先生観たいし、咲妃みゆ、霧矢大夢の二人の出るラテンダンスを踊るナンバーもめちゃくちゃ気になる。帰国前なので、感想をあさることを楽しみにしている。

『The Lehman Trilogy』 at Gillian Lynne Theatre

劇場外観。

私のNTLデビューの今作。ウェストエンドにカムバックするということで、さっそく初日の二日目にして観に行ってきた。

劇場から見えたビル、観劇前の気持ちが高まった。

元々観たいなと思いつつ、公演期間的に無理かもしれないと思っていたのだが、奇跡的にチケットがほぼ最安値の23ポンドで出ているのを発見したので観に行った。そこまで良くないサイドの席だったので、開演して舞台の幕に映し出されているだろう文字が思わず笑ってしまうくらい一ミリも読めない時には不安になったが、幕が開くとあの可動式の舞台をしっかりと視界に収めることができた。

元々の上演をすごく覚えているというわけでもないのだが、やっぱりサイモン・ラッセル・ビールの演じる可愛らしい娘役は脳裏に焼き付いているので、新しいキャストのナイジェル・リンゼイもどこかそのように映った。ハドリー・フレイザー演じるMayer Lehmanとナイジェル・リンゼイ演じる妻のBarbaraが結婚するのだが、その時に投げた紙吹雪が髪や服についているのを払って、払いきれなかった分が髪の上に残っていたのを、キャスト同士でシーンの間にさっととっていたのが印象的で、萌え的にも良かった。はけることがなく三人が舞台に出ずっぱりというのを強く感じた瞬間でもあった。

あとは、前回が白人男性三人だったことを考えると、マイケル・バログン の存在は新しい印象を受けた。子役を演じている時が可愛い。演技の上手い俳優だったら国籍も民族も性別も問わずにキャスティングしていいのではないだろうか。

大まかな内容は覚えていても、そこで話される英語が完全に分かっている訳ではないので、新しい人間を演じる時に眼鏡やサングラスをかけてくれたりするとビジュアルイメージから役を区別することができるので分かりやすいなということは新しい発見だった。また、最後の方に「お金はどこですか」「いつから」「警告」と日本語を話すシーンがあるが、そこも全然映像で観た時には印象に残ってなかったのが、今回は異国で観ているからかしっかり印象に残った。

またこれは戯曲を確認したいのだが、後のリーマンブラザーズの社長として関わって来るギリシャ人の親子の場面でインフルエンザとマスクのネタが話されて笑いが起こっていたのだが、これもコロナ前からあったやつだろうか。疑問に思った。

あとは大事なシーンでしか使わないかと思いきや装置結構逆回転するなとか、色々な使い方をしている書類箱人が乗ってもつぶれない頑丈で軽い出来だとか色々思いつつ、悪夢にうなされる彼らや恐ろしい経済の状況で暗雲たる気持ちになった。

 

これからは、マンチェスターで特にクイアと環境問題に関わる芝居を観ていくことになると思う。こうご期待!(見ている人がいるか分からないが)