バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

ウェストエンド観劇②ー『Best of Enemies』・『HEX』―

こう思い返してみると、前回の『Wicked』、『RUINATION』に続き、『Hex』と魔女物を観ることが多い今回の観劇旅行。課題にかかりきりになって全然ブログを書く時間が取れなかった!ということで、曖昧で簡単なブログになります…。

『Best of Enemies』in Noël Coward Theatre

ジェームズ・グレアム作・演出のアメリカ政治劇で、Young Vicからウェストエンドにトランスファーした上演。

好評ということを聞いていたし、かなり楽しみにしていたのにも関わらず、

①見切れ席、②満腹、③ポカポカ温かい、④予習不足、⑤政治劇で英語が難しいという複合的な要因のせいで途中一幕では逃れられない眠気が襲い掛かった。しかし、その眠気の中でも、ビジュアル的な要因、映像の使い方や、照明のネオンっぽい照明が額縁舞台を強調し=TVのように見せている所、二階建て構造になってて、TV局のマスター室になったり、映像がそこに映し出されたりする装置などは楽しむことができた。この二階建てのセットNTLiveで観た『メデイア』に似ているなと思ったが、同じデザイナーというわけではなかった。

二幕では正気を取り戻して、話の筋、保守派のWilliam F. Buckley JrとリベラルのGore Vidalが、TVで生放送されている討論の場でどんどん相手を挑発する方向に進んでいって、とうとういうべきではない罵倒をしてしまう、そのような過激さを加速させてしまうTVというメディアの在り方考えさせるというような流れは掴むことができた。今回の反省は日本でもよくやっているのだが、金がないからと言って見えにくい一番安い席だと集中力を失うということだ。とはいっても金がないので今度観に行くミュージカルも軒並み最安席を取っている。当日券で上手く見やすいチケットを手に入れるというのが良いのかもしれないが運の要素もあるし、難しさを感じている。

 

『HEX』in National Theatre

開演前の舞台の様子

皆さまお馴染みナショナルシアターのオリジナルミュージカル。「眠れる森の美女」の物語をベースに、彼女を眠らせてしまった魔女に焦点を当てている。実はこの魔女は妖精の世界の中では、羽の生えていない落ちこぼれなのだが、ひょんなことからお城の使者に、あまり眠ってくれない赤ちゃん王女を眠らせる魔法をかけるように頼まれる。最初は快諾するものの、王女自身が望んでいないため魔法をかけようにもかけられず、周囲に侮辱された彼女は王女に呪いをかけてしまう。この呪いによって全ての魔法の力を失い、彼女は深く後悔する。王女を目覚めさせる王子を探し出すが、人間の王子たちは行く手を阻む棘によって同じく眠らされてしまう。偶然食人鬼がこの棘に抗体を持つことを発見した魔女はこの食人鬼が腹に宿している男の子を成長させて、王女を助けてもらうことを画策する。魔女は自身の子供を食べそうになってしまう食人鬼に食欲がなくなる魔法をかけたと偽り、王子も無事成長する。城に向かった王子はキスによって王女を眠りから覚まし、彼らは結婚、子供も生まれる。しかしながら、助けてくれた恩人だと思っていた魔女が実は呪いをかけた張本人だという事、王子の母親が食人鬼であることが判明し…。という話だ。

例によって、直前まで予習をしておらず、客席で急いであらすじを読み始めたが、サイト上のPDFが内容を詳しく説明してくれていたので非常に助かった。眼鏡をかけているので使わなかったが、字幕を表示できるグラスのようなものもロビーで貸し出していた。かなりサービスが手厚いのはさすがだと思う。

道具や装置、照明のレベルの高さはさすがのナショナルシアターで、幕開きから、三人の魔女が天井からつられて降りて来るのだが、裾の長いドレスとそのドレスに映像が投影された様は非常に美しかった。歌も音楽もすごくコミカルなナンバーが多く、面白かった。ただ、食人鬼というのは今まで見たミュージカルや演劇を観てきた中でもあまり見ることのないキャラクターだったので、そもそも食人鬼ってなんだという引っ掛かりがあり、ストーリーも上手くできているというよりはよく思いつくなという感じである。また、魔女や食人鬼、王女のシスターフッド、母親の大変さ的な童話の語り直しだとは思うのだが、王子のキスでめざめるという王道の部分がそこまで変更されていないのが意外だった。直ぐに子供が生まれるのだが、16歳のまま眠ってしまっているのでかなり若年出産だな…とか子供と母親代わりと言ってもまだまだ精神的には幼い魔女しかいないけど大丈夫かなとか考えてしまった。

また、食人鬼の住む森の家のシーンでアンサンブルが灰色の袖長めの服を着ているシーンがあり、全体的に森のセットになっているのだが、プルカレーテの演出するファウストのアンサンブルや、野田版『夏の夜の夢』の美術や世界観に近い雰囲気を感じた。題材によるものかもしれないが…。

youtu.be

観劇前に路上で観たET、