バナナの木

演劇学を学ぶ大学四回生です。自分の勉強のために観劇の感想を書こうかと思っているブログ

ラストのマンチェスターでの観劇~ロイヤルエクスチェンジシアター『No Way? No Pay!』・『Dirty Dancing』~

 この後も『UNTITLED F*CK M*SS S**GON PLAY』や『チャーリーとチョコレート工場』、『SIX』、『ジーザスクライストスーパースター』、『ハミルトン』等々、面白い作品の上演が続々あるマンチェスターだが、もう移動しなくてはいけないのでこの二作品が最後の作品になった。元々7月にまた帰ってくる予定で、『UNTITLED F*CK M*SS S**GON PLAY』を二枚と、Manchester International Festival(6月29日から7月16日)で上演されるリミニプロトコルの『ALL RIGHT. GOOD NIGHT.』のチケットを取っていたのだが、その後にカーボンリテラシーレーニングを受けた結果、飛行機の使用を控えようと思って色々と計画を変更したので絶賛これらのチケットを捌き中だ。ATGは柔軟に対応してくれるので意外なのだが、ロイヤルエクスチェンジシアターとHOMEシアターは日時の変更やキャンセルにあまり応じてくれないということが分かった…。

 

『No Way? No Pay!』 @ロイヤルエクスチェンジシアター

開演前の舞台の様子

 物価の上昇などの世界経済の危機的状況を扱った、不条理コメディ劇。脚本はDario Fo and Franco Rameが1974年に書いたもので、イギリスの現在の状況に合わせてMarieke Hardyが翻案している。演出は今シーズンでの退任が決まっている芸術監督のBryony Shanahan。

 物語は、スーパーで商品の値段が二倍にもなっていることに起こった女性たちが蜂起し、お金を払わずに商品を持ち帰ったという所から始まる。自身もこの運動に参加したアントニアだったが、誠実で真面目な夫のジョバンニに泥棒だと非難されることを恐れて、盗んで来た商品を隠そうとする。そこで、友達のマルガリータのお腹の中に隠して、妊娠したということにするが、そこに警察も捜査しにやってきて…という話で、嘘が重なって、どんどん過激な結末に向かっていく。劇中では、動物の餌の商品を食べるとか、妊娠に関して無知な男性というフェミニズム的でもあるジョークが満載で、かなり面白い。また装置もすべり台などが使われていて、色合いもポップにしてある。ただ、背景には、人々が困窮しているこの資本主義社会に対する批判があり、政治的なテーマも色濃く感じた。終幕には、キャストが全員でBella ciaoというレジスタンスの賛美歌を歌い感動的に終わる。最初どういう話が分かるまでは少しふわふわとしていたのだが、後半にかけてどんどん面白くなっていく感じだった。土曜の公演であるにも関わらず、今まで見てきた中で一番観客が少なかったようなのが少し残念だった。

 
『Dirty Dancing』 @パレスシアター

 1987年のロマンス映画を基にしていて、裕福な家に生まれた真面目なティーンの少女が、労働階級でアダルトな魅力のあるダンスインストラクターにダンスを教わっているうちに恋に落ちるという物語だ。この上演は、ツイッターにも書き込んだのだが、めちゃくちゃ暑いのにエアコンが効いていない、そのため巨大な扇風機が使われているが上演中は音がうるさすぎる、扉が開け放たれていて人が通るごとに廊下の明かりが煌々と観客席内に入って来るなどと劇場の環境が悪すぎて全く集中して観ることが出来ず、他の観客の態度も最悪で、開演時は席に着けていない人が何人もいてザワザワしているし、近くの観客はスマホをいじって、撮影しようとするし、叫ぶし、歌うしで本当にマナーが良くなかった。『ボディガード』の上演で観客が歌い続けて公演中止になった劇場なのだが、これは起こるだろうなと思ってしまった。最も進行の邪魔で不愉快だったのが、客席からの叫び、掛け声なのだが、演者は最後にThank you Manchester!と楽しそうに叫んでいたので案外気にしていない可能性もある。

 映画でも、ケニー・オルテガの振り付けした見事なダンスシーンが有名だが、ミュージカル版もダンスのナンバーが多く、見応えがあった。とにかくヒロインが恋に落ちるジョニー・キャッスルを演じたMichael O’Reillyが筋骨隆々の色気むんむんといった感じで魅力的で、会場からも黄色い声援が飛んでいた。

 

 少し消化不良的な部分もあるが、日本では地方暮らしで、コロナもありあまり観劇出来ていなかったので、イギリス留学中に沢山のプロダクションを観て吸収出来て非常に楽しかった。次回はシビウ国際演劇祭のブログを投稿していこうと思う!